3.1 走査

テレビなどの映像信号は二次元の情報をもち、リアルタイムに変化します。この情報はそのままでは、一次元信号の電気で伝送することが出来ないので映像に一定の順序をつけ、一次元信号に変換する必要があります。

テレビカメラで撮像された映像は画素と呼ばれる最小単位で構成されており、この画素を一定の順番で並べることにより一次元に変換します。

具体的には一行目の左端から右端に横方向に画素を取り込んでいき、右端に到達したら次の行の左端から右端に取り込みます。最後の行に到達したら、また一行目に戻り、取り込みを続けます。このように画像を取り込み、またそれを組み立てなおす事を走査といい、走査によって生じる横の線を走査線と呼びます。また、走査線の終わりから次の走査線に移る期間(FIGURE.1で示す1′-2の間)を帰線期間といいます。

走査のイメージをFIGURE.1に示します。このような走査の方式を順次走査と呼びます。

走査のイメージ

FIGURE.1 順次操作のイメージ

このときに横方向に移動している走査を水平走査、走査線を上から下に少しずつずらしていく走査を垂直走査と言います。水平走査、垂直走査を同時に行い、その結果できる走査線の軌跡をラスターと呼びます。

NTSCでは、この走査線の本数が525本となっており、縦横比3:4の画面を形成し、1秒間に30枚の画面を作ります。ただし、走査の仕方は前述の順次走査ではなく飛越走査と呼ばれる方式を使います。

飛越走査とはFIGURE. 2(a)に示すように、まず1,2,3,4のように間をあけて走査し、次に5,6,7の走査線が最初の走査線の間に入るように走査します。2回の垂直走査によって画面全体の走査が完了するわけです。

飛越走査のイメージ

FIGURE.2 飛越操作(a)

飛越操作のイメージ

実際のNTSCでの操作

FIGURE.2 飛越操作(b)

実際のNTSCでの操作

実際のテレビでは、FIGURE.2(b)に示すように、525本の走査線が並びます。

FIGURE.2のような走査を飛越走査(インタレース)と言います。 NTSCの飛越操作では、1秒間に30枚の画面を作る間に垂直走査を60回行うことになります。飛越走査の1回の垂直走査をフィールドと言い、2回のフィールドによる完全な走査をフレーム走査といいます。

飛越走査の利点は、人の目の残像効果を利用し、一度の伝送量を減らした上で、与えられた電波の帯域内で最大限の情報を送れることです。フィールドの送出で1回目と2回目に時間差が生じ、動画に対して映像がぼけてしまいますが、人の目は、動画に対しての解像度は低いと言う特性を利用した巧みな方法と言えます。